2007年4月27日金曜日

国語の入試問題から(その3 トリッキー)

 「T・C・スクェアが言うように、サキは『真面目な顔をして嘘をつく男』であり、彼がつく 嘘は、表面ユウモアでやわらげられてはいるものの、裏面には人の心を凍らせるような、冷たい諷刺をつねにかくしている。とかく諷刺とは読者にあるモラルをおしつけるものだが、サキの場合の諷刺には、そんなモラルさえない。」「ほとんどニヒルといっていいほどの悲しみを、うちに堪えていながら、それをユウモアやウィットの糖衣でつつみ、読者の前に提供する。しかし、口にした瞬間はあまくても、読者は、すぐにこの糖衣の下の苦い味をあじわわざるを得ない。」「要するに、サキの作品は、非情、ユウモア、ペエソス、諷刺などを軽く調理した冷料理である 。」(サキ短篇集(新潮文庫)の訳者・中村能三さんの解説)

 この「読者」にされ、新年早々に「冷料理」を提供されたのが、小学校6年生の子供たちなのです。先日、長嶋有さんの「サイドカーに犬」を取り上げましたが、同じ学校の今春の県外受験 の問題。サキの「開いた窓」が出題され(文庫版P69所収の短篇)、早い話が、ウイットや"オチ"の意味がわかりましたか?と問われています。

 あらすじを書いてしまうのも味気ないので、ぜひ、一度お読み頂ければと思います。

 ゴルフで「トリッキーなコース」という言葉がありますが、「トリッキーな出題の学校」なのかもしれません。あるいは、「変化球を好む出題者」なのかも。しかし、正直、ただでも年齢以上の難しい読み取りを要求されているうえに、こうした見慣れぬ"ペエソス、諷刺"でひどく揺さぶりをかけられているよう見え、この時ばかりは、子供たちが気の毒に感じられました。

 (大げさですが)入学する子がどういう子供であって欲しいと学校側が願っているのかいまだにわからないと思っていますし、(更に大げさですが)子供を年齢に応じて育ててゆくのではいけないのか、とも感じ続けています。
にほんブログ村は、多くの中学受験ブログが参加中ですにほんブログ村 受験ブログ 中学受験へ

「人気blogランキング」「FC2受験ブログランキング」にも参加しています。
人気blogランキング  FC2 Blog Ranking

0 件のコメント: